調律 その4

やってきたOさんは明朗会計。ホームページにすべての作業とそれに関わる料金が明示されている。電話で申し込んだときも、「初回は時間が3時間ぐらいで1万5000円+交通費+税をいただきます。」とはっきりおっしゃる。

 

日本人はお金のことをあまり明らかにしたがらないけれど、こうしたことははっきりさせてもらったほうが気持ちがいい。

 

「しっかり点検、調整させてもらって4時間ぐらいで2万円。というもできますがどうしますか?」と言われ、すっかり人間不信、いや調律師不信の私はまたツリかも。と思い「今回はまず簡単にしていただいて、修理が必要とあれば後日。」という形でお願いする。

 

Oさんはホームページによると昭和36年生まれのベテラン。今回も掃除機スタンバイでお迎えする。「調律中、近くにいていただいて結構。どちらかというと近くにいていただいた方が作業について説明しやすいので」とおっしゃるので私も同席。

 

こんなことを言われたのは初めて。たいていの場合、別に追い払われる訳ではないけど、作業が始まったら退散、呼ばれたら行く。という感じ。

 

ふたを開けてまず始まったのは弦磨き。ピアノの弦を磨いてくれる調律師さんは初めて。よく見れば、楽器本体のフレームにもホコリがいっぱい積もっているし、弦が汚れるのも当然だろう。「こんな作業オカルトみたいだと思われるでしょうけど音が変わるんですよ。いい音になるんですよ。」と磨いてくださる。ピアノの弦。確か88×2+α本だったと思う。信じられない。こんなことしてたら日が暮れる!と思わず「何かお手伝いできることありませんか?」と言ってしまった。

 

「じゃあ、鍵盤磨きお願いします。」鍵盤磨き?表面汚れてるからね。と思ったら鍵盤の表面ではなく、裏側の塗装されていない部分をやすりがけ。裏側は工場で形作られるときにのこぎりで切ったままの状態。なので滑りをよくするために表面をうすーく磨く。こんなことしていた調律師さんもいなかったなぁ…でもこれは自分でやるから特別料金加算されたりしないよな。と始めたが、やり始めると楽しくて、無になってシュッシュッと磨き上げた。(真ん中10本ぐらい、Oさんの作業スピードに間に合わなくてOさんがやってくださったけど。)

 

私が鍵盤磨きをしている間に弦磨きを終えたOさんは、さらに内部の部品を磨き、お掃除が終わったところで調律。調律するときは以前来ていたY’さんが「扇風機の風で空気が揺れるだけで音が変わる。」と言っていたのを思い出し、邪魔になってはいけないと静かに退散。調律が終わった頃に再び部屋に戻ると、ハンマーと弦の当たりや、固くなったハンマーを磨いたり針を刺したりして柔らかくしたり、さび付いて動きが悪くなった部品に油を差したり、弱音ぺだるの調整など丁寧に丁寧に手入れしてくださって終了。

 

どきどきしながらお会計。初めに電話でお知らせくださった通りの値段だった!他の業者だと、別料金になる作業なども込みで1万5000円はやすい!もちろん、音も物凄くいい音になった♪♪初めはこんなことする?と思ったりもしたが、早く娘が帰ってこないかな。早く弾いてみて欲しい。って思うほど劇的に改善した。ありがとうOさん!ようやく運命の調律師さんに出会った!!これからもよろしくお願いします♡

 

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作業している途中(ピアノと壁の間に挟んである布団をさして)「これは?」と尋ねられたので、気休めかもしれないけれど以前来ていた調律師さんに教わって防音している。と答えると「いい人ですね。普通こんなこと勧めず商品売りますよ」と言われる。

また、ピアノの底に入れてた調湿剤を見て「こんなのいりません。」(生協経由の業者に買わされた)とY’さんと同じ事を言われる。そして「いい調律されてたから音は安定していますよ」とY'さん、いい人だったんだね。と思わされることがあった。Y'さんどうしていらっしゃるだろう?

 

 最後に、Oさんの言葉で一番深く残った言葉

「ピアノの部品を持って帰って修理するっておかしいですよ。ここでたいていのことはできますから。何もしないで持ってきて直しました。って言われてもわからないでしょう?」

確かに。深い言葉だった。